Introduction
2011年、ベストセラー小説を原作とした映画『トガニ 幼き瞳の告発』、2016年に1156万人の観客を動員したパニック映画の大作『新感染 ファイナル・エクスプレス』と、ヒット作での共演が続くチョン・ユミとコン・ユの3度目の共演にして初の夫婦役となった本作は、韓国で初登場1位を獲得する大ヒット!監督は短編映画で注目され、本作が長編デビュー作となるキム・ドヨン。自身も2人の子を持つ母である彼女の繊細な演出は、現代の女性の生きづらさを描いた原作を、すべての人たちの心を震わせる物語に見事に昇華させている。
世界が広いと信じていた子供時代、女性としての生きづらさを初めて知る少女時代、必死に勉強して入った大学から就職への壁。結婚・出産で会社を辞め、社会から切り離されていくような気持ちを抱える日々、そして再就職への困難な道――。女性なら誰もが感じたことがあるであろう場面を積み重ね、ジヨンの人生は描かれる。観客はその人生に共感し、絶望し、彼女を応援し、そして映画でジヨンが選んだ生き方に、きっと未来への希望をみつけるはずだ。
Story
結婚・出産を機に仕事を辞め、育児と家事に追われるジヨン。常に誰かの母であり妻である彼女は、時に閉じ込められているような感覚に陥ることがあった。そんな彼女を夫のデヒョンは心配するが、本人は「ちょっと疲れているだけ」と深刻には受け止めない。しかしデヒョンの悩みは深刻だった。妻は、最近まるで他人が乗り移ったような言動をとるのだ。ある日は夫の実家で自身の母親になり文句を言う。「正月くらいジヨンを私の元に帰してくださいよ」。ある日はすでに亡くなっている夫と共通の友人になり、夫にアドバイスをする。「体が楽になっても気持ちが焦る時期よ。お疲れ様って言ってあげて」。ある日は祖母になり母親に語りかける。「ジヨンは大丈夫。お前が強い娘に育てただろう」――その時の記憶はすっぽりと抜け落ちている妻に、デヒョンは傷つけるのが怖くて真実を告げられず、ひとり精神科医に相談に行くが・・・。
Cast & Staff
どんな場所で生きてきて、生きていて、今後生きていかなければならないか、 そんな悩みを分かち合い、共感を得られることを望む。
Production Note
『82年生まれ、キム・ジヨン』の制作陣は、日常的な生活空間の設定から、登場人物の詳細な変化まで映像で描き出すことに心血を注いだ。『君の結婚式』で、歳月の流れに合わせた登場人物の感情を繊細に描いた撮影監督のイ・ソンジェは、過去と現在を行き来するたびに変化する俳優の感情を細かに捉えた。これを実現するために多様な構図で、登場人物を捉える一方で、淡々としながらも、少しずつ積み重なっていく感情を調和の取れた映像で撮り、物語に引き込む。
『火車 HELPLESS』、『ザ・キング』の撮影を担当し、『虐待の証明』、『ドアロック』で、家という日常的な空間に、登場人物の鋭利な緊張感を吹き込んだ美術監督のイ・ナギョムは、今回そこから一歩進んで、ジヨンの人生と感情を溶け込ませた室内空間をデザインし、日々の暮らしを感じさせる普通のマンションの一室に『82年生まれ、キム・ジヨン』ならではの情緒を完成させた。さらに『1987、ある闘いの真実』で、第38回韓国映画評論家協会賞で音楽賞を受賞した音楽監督のキム・テソンは、登場人物の変化する感情に繊細な旋律を乗せて、完成度を高めた。時に淡々とした、時に高揚する感情に合わせた音楽は『82年生まれ、キム・ジヨン』を豊かな情緒で満たす。このように撮影から、美術、音楽に至るまで、ディテールにこだわった努力を傾けた『82年生まれ、キム・ジヨン』は、深い余韻を残しながら、観客の心を捉えるだろう。
『82年生まれ、キム・ジヨン』は、確かな経験を持つ実力派俳優が描き出すリアルな家族により、幅広い共感を引き出す。ドラマ「ゴー・バック夫婦」、「また!?オ・ヘヨン ~僕が愛した未来(ジカン)~」など多数の作品で、私たちの周囲にいるような親しみやすい人物を演じてきたキム・ミギョン。彼女は常にジヨンを愛し、信頼する母親ミスクを演じる。ジヨンを温かく包み込む姿を深みのある演技で表現したキム・ミギョンは、チョン・ユミと母娘を自然に演じ、切なさと感動で観客に忘れ得ぬ余韻を残すだろう。 そしてジヨンの頼もしい姉ウニョン役を、多数のインディペンデント映画で演技力を認められてきたコン・ミンジョンが、ジヨンの弟ジソク役を、ドラマ「刑務所のルールブック」、「アスダル年代記」で注目された新鋭の俳優、キム・ソンチョルが演じる。ジヨンの父親ヨンス役は、ドラマ「ライブ ~君こそが生きる理由~」で、退職前の警察官役で心に響く演技を見せたイ・オルが演じ、作品を一層多彩にする。 あたかも自分の家族のように見える自然で飾らない庶民的な演技から、ジヨンの傷に向き合って、噴出する深みのある感情まで、ジヨンの家族を演じる実力派俳優たちの幅広い演技は『82年生まれ、キム・ジヨン』の見逃せないポイントになるだろう。