この度、第93回アカデミー賞国際長編映画賞にノミネートされ、ヒットメーカーのエドガー・ライト監督をして「本作のノミネートが心から嬉しい」と言わしめた傑作『少年の君』。その監督として世界から注目を浴びるデレク・ツァンの単独監督デビュー作にして、同じくチョウ・ドンユイを主演に迎え圧倒的評価を獲得したのが本作『ソウルメイト/七月と安生』だ。プロデューサーを務めた名匠ピーター・チャン監督の下、既に監督の繊細な演出手腕は遺憾なく発揮されており、香港のアカデミー賞にあたる香港電影金像奨で12部門ノミネート(作曲賞受賞)、同じく中華圏を代表する映画賞・金馬奨ではアンシェンを演じたチョウ・ドンユイ、チーユエを演じたマー・スーチュンの二人に主演女優賞W受賞という快挙をもたらすなど、その年の映画賞を席巻した。同名のネット小説を大胆に脚色して描かれた2人の女性の物語は、彼女たちの半生を丁寧かつドラマティックに綴りながらも、予想だにしなかった結末へと加速してゆく。それは、観る者を震えるほどの切なさとこの上ない優しさで包み込み、自分にとっての大切な人、大事な何かを、きっと思い出させてくれるだろう。
ある日、安生(アンシェン)の元に映画会社から連絡が届く。彼らは、人気ネット小説『七月(チーユエ)と安生(アンシェン)』を映像化したいのだという。作者は七月(チーユエ)という名の女性だが、所在は不明。物語は幼馴染の女性2人の友情を描いたもので、作者の自伝的な要素が強いという話だった。そこで彼らは、もう一人の主人公のモデルを探し、アンシェンに連絡をしてきたというわけだ。だがアンシェンは「チーユエなんて人は知らない」と彼らに嘘をつく。チーユエ・・・彼女はアンシェンにとって特別な存在だった。何よりも大切な親友、そして誰よりも激しくぶつかりあった戦友、互いに魂の奥深いところでつながっていたはずの2人。それなのに、彼女たちの間に一体何があったのか?恋を知り世界を知り、移ろいゆく時代の中で、彼女たちは何を選び取り、何を捨てたのか?小説に描かれた2人の物語に秘められた驚きの真実が、今明かされようとしていた。