本作の主演を務めたのは韓国映画界を代表する名優ハ・ジョンウ。『チェイサー』や『白頭山大噴火』など、圧倒的な存在感で様々な役を演じきってきた彼が本作で挑むのは、囚われた人質を果敢に取り戻そうとする外交官。さらに、日本でも爆発的ヒットとなったTVドラマ「宮(クン)〜Love in Palace」で熱烈な人気を誇り、近年は『アシュラ』『神と共に』シリーズなどの作品で幅広い役柄を演じて活躍の幅を広げるチュ・ジフンが相手役を務め、打算的だがどこか憎めないタクシー運転手を好演した。監督を務めるのは、日本をはじめ世界各国でリメイクされた韓国映画の傑作『最後まで行く』で、韓国のアカデミー賞🄬とも名高い大鐘賞の監督賞に輝いたキム・ソンフン。ここに新たな韓国アクションの傑作が誕生した!
レバノン内戦下のベイルートで韓国人外交官が忽然と姿を消した。やがてそれが忘れ去られた頃、現任の外交官ミンジュン(ハ・ジョンウ)は、消えた外交官が人質として生きていることを告げる暗号をキャッチする。彼を救うため、身代金を手にレバノンに向かったミンジュンだが、現地に降り立つや否や大金を狙った武装組織に襲われピンチに陥ったところを、タクシー運転手として働く韓国人のパンス(チュ・ジフン)に救われる。金のためなら何でもするパンスを、韓国政府からの見返りをチラつかせて同行させることにしたミンジュン。奇妙な協力関係で結ばれた二人は、時にぶつかり、互いを認め合いながら戦火が吹き荒れるベイルートの街を突き進んでいくのだが…。果たして二人は捕らわれた外交官を無事に救うことができるのか?
1978年3月11日ソウル出身。キム・ソンフン監督の前作『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』(16)では、水2本と娘へのバースデーケーキだけの少ない食料を頼りにした孤独なサバイバル劇で観客を魅了した。同作のほか、『神と共に』(17,18)シリーズ、「ナルコの神」(22)など、困難の中で希望を失わないキャラクターを演じる時に最大の強みを発揮する彼は、本作でも極限状況に飛び込む。非公式な作戦のためレバノンへ向かう外交官ミンジュンを演じるハ・ジョンウは、人間味のある卓越した演技とユーモアセンスを本作でも披露してくれる。
1982年5月16日ソウル出身。『神と共に』(17,18)シリーズから『工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男』(18)、『暗数殺人』(19)まで、チュ・ジフンは多様な物語とキャラクターの魅力を観客に届け続けている。「キングダム シーズン 1~2」(19~20)以来、 本作で再びキム・ソンフン監督とタッグを組んだ彼は、カラフルな衣装や流暢なアラビア語スキル、そして華麗な演技でキャラクターに新しい命を吹き込んだ。最初は利害関係でミンジュンに協力していたものの、やがて友情と絆で結ばれていく様子を見事な演技で表現し、物語に興奮と温かみを加えている。
キム・ソンフン監督の作品に共通するテーマは、予想外の危機に直面する一般の人々の闘争と、その中であらわれる人間性や緊張感、そしてユーモアだ。
『最後まで行く』(14)はカンヌ映画祭の監督週間に招待され、彼の名を映画界に知らしめることになった。この映画は、ひき逃げ事故を隠そうとする刑事が悪夢のような事態に巻き込まれる様を激しく描いている。冒頭から画面を支配する悪役の存在感、スリラーやサスペンスに期待されるジャンル要素、そして類まれなるユーモアを兼ね備え、芸術性と商業的成功を見事に融合させた。
『トンネル 闇に鎖(とざ)された男』(16)は、娘のために誕生日ケーキを持って帰る途中でトンネルに閉じ込められた普通の父親の35日間の孤独な闘いを描いた。トンネルの外で待つ家族、消防士、独占報道にしか関心のないジャーナリスト、そして世論だけを気にする政治家など、さまざまな人々の生活や思惑が渦巻く様子をリアリティたっぷりと描写している。これまでのディザスター映画にありがちな演出を打破し、斬新な物語で本国712万人もの観客を動員する大ヒットとなった。
その後、「キングダム シーズン 1~2」(19~20)は韓国オリジナルドラマシリーズを世界に羽ばたかせる突破口となり、韓国ゾンビブームを引き起こした。同作のヒットは、「キム・ソンフン監督が作る作品=面白い」という公式を確立させたのだ。
そして数年ぶりにスクリーンに戻ってきたキム・ソンフン監督は、スーパー・ヒーロー映画から最も遠い物語『ランサム 非公式作戦』を披露する。この映画は、野心に燃える外交官と現金なタクシー運転手が、姿を消した同僚を救うという共通の目標に向かって協力し合う物語を通し、市井の人々の勇気と絆、そして友情を描いている。政府からの支援も無しに、危険な任務に挑む2人のキャラクターの生存本能と発想力は、観客に思いもよらない共感と笑いを提供する。『ランサム 非公式作戦』は極上のエンターテインメントを約束し、キム・ソンフン監督の名前は映画史に深く刻まれるだろう。