ソウルのタクシー運転手マンソプは「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられ、ドイツ人記者ピーターを乗せて英語も分からぬまま一路、光州を目指す。何としてもタクシー代を受け取りたいマンソプは機転を利かせて検問を切り抜け、時間ぎりぎりで光州に入る。“危険だからソウルに戻ろう”というマンソプの言葉に耳を貸さず、ピーターは大学生のジェシクとファン運転手の助けを借り、撮影を始める。しかし状況は徐々に悪化。マンソプは1人で留守番させている11歳の娘が気になり、ますます焦るのだが…。

戒厳令下の物々しい言論統制をくぐり抜け唯一、光州を取材し、全世界に5.18の実情を伝えたユルゲン・ヒンツペーター。その彼をタクシーに乗せ、光州の中心部に入った平凡な市民であり、後日、ヒンツペーターでさえその行方を知ることのできなかったキム・サボク氏の心境を追うように作られた本作は、実在した2人が肌で感じたありのままを描くことで、1980年5月の光州事件を紐解いていく。
平凡なタクシー運転手に韓国映画界の名優ソン・ガンホ、ドイツ人記者にドイツのベテラン俳優トーマス・クレッチマン。 他、唯一無二の存在感を放つユ・ヘジン、若手実力派リュ・ジュンヨルと豪華キャストが集結。ここに『義兄弟』『高地戦』のチャン・フン監督の演出が加わり、平凡なタクシー運転手と外国人記者、そして光州で出会う人々が危険な状況に負けず、最後まで自分の信念を貫き通した“あの日”をドラマチックな感動で包み込む話題作がついに日本上陸する。
ソウルのタクシー運転手マンソプは「通行禁止時間までに光州に行ったら大金を支払う」という言葉につられ、ドイツ人記者ピーターを乗せて英語も分からぬまま一路、光州を目指す。何としてもタクシー代を受け取りたいマンソプは機転を利かせて検問を切り抜け、時間ぎりぎりで光州に入る。“危険だからソウルに戻ろう”というマンソプの言葉に耳を貸さず、ピーターは大学生のジェシクとファン運転手の助けを借り、撮影を始める。しかし状況は徐々に悪化。マンソプは1人で留守番させている11歳の娘が気になり、ますます焦るのだが…。
始まりは1980年5月の光州を取材したユルゲン・ヒンツペーター記者、そしてソウルから彼を乗せて光州まで行った一人のタクシー運転手キム・サボクの話だった。韓国現代史の大きな痛みである事件を扱うというプレッシャーがなかったとは言えない。“果たして私がこのようなスケールの大きな事柄を映画にできるだろうか”という怖さが先に立った。
そんなプレッシャーにもかかわらず『タクシー運転手』に私自身が引き込まれていった動力とは、マンソプとピーターという2人の主役のおかげだ。当時ユルゲン・ヒンツペーターは日本特派員として仕事をしていた。そんな中、韓国の状況を聞いて躊躇することなく光州に取材に来た。一体何が彼をそこまで突き動かしたのか。そして偶然にも彼に同行することとなった平凡なタクシー運転手は、共に行動する中で何を見て何を感じたのか。そんなマンソプの目に映った時代の姿と彼の心が大きく揺さぶられる様を描きつつ、歴史上の偉人が成し遂げた大きな事柄ではなく、普通の人々の小さな決断と勇気が積み重なり何かが成し遂げられるといった、近くで見ていなければ知り得ない事柄を描きたかった。マンソプのタクシーに乗りながら、観客の皆さんにも、自分たちの話として考えてもらえる機会になれば嬉しい。
この話は平凡なタクシー運転手と外国人記者、それから光州で出会う2人の視線を通じて描かれる“あの日”に対する物語だ。そして平凡なある個人と時代が生んだ、危険な状況に負けず、最後まで自分の仕事を成し遂げたという話でもある。
——— 監督 チャン・フン
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